相続が発生したら
ご家族が亡くなられた直後は、深い悲しみの中で葬儀の準備などに追われ、あっという間に時間が過ぎてしまいます。しかし、相続手続きには法律で定められた期限があるものが多く、適切な対応をしないと後々大きなトラブルに発展したり、経済的な不利益を被ったりする可能性があります。
特に、相続財産に不動産が含まれる場合や、相続人が多いケースでは手続きが複雑になりがちです。このページでは、相続が発生してから完了するまでの全体的な流れと、各ステップで必要な手続きを網羅的に解説します。計画的に手続きを進め、円満な相続を実現するための一助となれば幸いです。

目次
相続手続きの全体像と流れ
相続手続きは、おおよそ以下の流れで進んでいきます。特に「3ヶ月」「4ヶ月」「10ヶ月」という期限が重要なポイントになります。まずは全体像を把握しましょう。
死亡直後の手続き
死亡届の提出など 【7日以内】
遺言書・相続人・財産調査
相続の全体像を把握するための重要なステップです。
相続放棄・限定承認の検討
財産より借金が多い場合などに検討します。【3ヶ月以内】
所得税の準確定申告
故人が事業主だった場合などに必要です。【4ヶ月以内】
遺産分割協議・協議書作成
相続人全員で財産の分け方を話し合います。
各種名義変更・解約手続き
不動産、預貯金、株式などの名義を変更します。
相続税の申告・納付
相続税がかかる場合に申告と納付を行います。【10ヶ月以内】
【期限別】具体的な相続手続きの内容
死亡後すぐ(7日以内)
まずは社会的な手続きと葬儀の準備を並行して進める必要があります。
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死亡診断書(死体検案書)の取得:病院で亡くなった場合は医師に「死亡診断書」を、事故死などの場合は警察の検視後に「死体検案書」を作成してもらいます。後の手続きで原本の提出を求められることがあるため、必ず複数枚コピーしておきましょう。
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死亡届の提出:死亡の事実を知った日から7日以内に、故人の本籍地、死亡地、または届出人の所在地の市区町村役場に提出します。通常は葬儀社が代行してくれます。
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火葬許可証の申請:死亡届を提出する際に、同時に火葬許可申請書を提出し、火葬許可証を受け取ります。これがなければ火葬は行えません。
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年金受給停止手続き:故人が年金を受給していた場合、年金事務所または年金相談センターに「受給権者死亡届」を提出します。マイナンバーが日本年金機構に登録されている場合は原則不要ですが、確認が必要です。
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世帯主の変更届:故人が世帯主だった場合、死亡日から14日以内に市区町村役場で手続きが必要です。
3ヶ月以内
ここからが本格的な相続手続きの始まりです。財産を相続するかどうかを決める、非常に重要な期間です。
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遺言書の有無の確認:自宅の仏壇や金庫、貸金庫などを探し、遺言書がないか確認します。公正証書遺言の場合は、公証役場で遺言検索システムを利用して調べることができます。自筆証書遺言を見つけた場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。
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相続人の調査・確定:故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本をすべて取得し、法的な相続人を確定します。思いもよらない相続人(前妻の子など)が判明することもあるため、極めて重要な手続きです。
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相続財産の調査・評価:預貯金(残高証明書の取得)、不動産(名寄帳や評価証明書の取得)、有価証券、生命保険、自動車などのプラスの財産だけでなく、借金やローン、未払いの税金などのマイナスの財産もすべて調査し、「財産目録」を作成します。
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相続放棄または限定承認の申述:最も重要な手続きの一つです。調査の結果、明らかに借金が多い場合は「相続放棄」を検討します。プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を返済する「限定承認」という方法もあります。いずれも、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。
4ヶ月以内
故人が自営業者であったり、不動産収入があったりした場合に必要な手続きです。
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被相続人の所得税の準確定申告:故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに確定申告を行う手続きです。給与所得者でも、医療費控除の還付を受けられる場合があります。相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に税務署に申告・納税します。
10ヶ月以内
遺産分割を確定させ、相続税の申告・納付までを完了させる必要があります。
- 遺産分割協議:遺言書がない場合、または遺言書に記載のない財産がある場合、相続人全員で「誰が」「どの財産を」「どれくらいの割合で」相続するのかを具体的に話し合います。一人でも欠けた協議は無効です。
- 遺産分割協議書の作成:話し合いで合意した内容を「遺産分割協議書」として書面にまとめます。後の不動産や預貯金の名義変更手続きで必ず必要になる重要な書類です。相続人全員が署名し、実印を押印します
- 相続税の申告・納付:遺産の総額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合に必要です。相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告し、原則として現金一括で納税します。
3年以内
遺産分割を確定させ、相続税の申告・納付までを完了させる必要があります。
- 不動産の名義変更(相続登記):※2024年4月より義務化されました。 放置すると将来の売却や担保設定が困難になります。
守るべきルール-
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、法務局で名義変更の手続き(相続登記)を申請しなければなりません。
違反した場合の罰則
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正当な理由がないにもかかわらず期限内に登記申請をしなかった場合、10万円以下の過料(かりょう:行政上の罰金)が科される可能性があります。
注意点
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この義務は、法律の施行日(2024年4月1日)以降の相続だけでなく、それ以前に発生した過去の相続で、まだ登記が済んでいない不動産
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期限はないが速やかに行うべき手続き
遺産分割協議がまとまった後、財産を具体的に引き継ぐための手続きです。明確な期限はありませんが、放置すると権利関係が複雑になるため、速やかに行いましょう。
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預貯金の名義変更・解約:金融機関所定の書類、遺産分割協議書、戸籍謄本などが必要です。
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株式など有価証券の名義変更:証券会社に連絡し、手続きを進めます。
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自動車の名義変更:陸運局で手続きを行います。
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生命保険金の請求:受取人固有の財産のため遺産分割の対象外ですが、速やかに請求手続きをしましょう。
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遺族年金・未支給年金の請求:請求しないと受け取れないため、忘れずに行いましょう。
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公共料金・クレジットカード等の契約変更・解約
注意すべきポイント
💡 遺言書を見つけたら
自筆の遺言書(法務局保管制度を利用していないもの)を見つけた場合、絶対にその場で開封してはいけません。家庭裁判所で相続人立会いのもと内容を確認する「検認」という手続きが必要です。勝手に開封すると過料に処される可能性があり、遺言書の有効性が争われる原因にもなります。
遺言書について詳しい解説はこちら>>
💡 相続登記の義務化について
2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければなりません。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過去の相続で未登記の不動産も対象となるため、注意が必要です。
専門家・機関の違い
法律、税金、行政手続きなど、私たちの生活には様々な専門家や機関が関わっています。それぞれの役割や業務範囲は異なるため、どの専門家・機関に相談すべきか判断するために、主な違いを理解しておきましょう。
相談先 | 主な業務内容 | 原則としてできないこと | こんな時に相談 |
---|---|---|---|
司法書士 | ・不動産・商業登記の手続き代理 ・裁判所に提出する書類の作成 ・相続・遺言書作成のサポート ・簡易裁判所での訴訟代理(請求額140万円まで) |
・税務申告や税務相談 ・地方裁判所以上の法廷での代理人活動 ・法律トラブル全般の交渉代理 |
手続きや書類作成が中心。 「登記」の専門家。 |
弁護士 | ・法律に関するあらゆる相談 ・民事・刑事事件における交渉や訴訟の代理 ・契約書の作成やリーガルチェック ・離婚、相続などの紛争解決 |
・不動産登記・商業登記の申請代理 ・税務申告の代理(税理士登録が必要) |
法律トラブル全般に対応。 「紛争・トラブル解決」の専門家。 |
税理士 | ・税務代理(確定申告など) ・税務書類の作成 ・税務相談(節税、相続税対策など) ・会計帳簿の記帳代行 |
・登記申請の代理 ・法律トラブルの交渉・訴訟代理 ・法律に関する具体的な判断やアドバイス |
お金と税金に関する手続きや相談。 「税金」の専門家。 |
市役所 | ・住民票、戸籍等の証明書発行 ・国民健康保険、年金の手続き ・各種許認可の申請受付 ・地域住民向けの相談窓口 |
・法律的な紛争の仲介や代理 ・専門的な税務相談 ・個人の財産管理 |
行政手続きや公的サービス。 「公的な手続き・証明書」の窓口。 |
銀行 | ・預金、為替、融資業務 ・資産運用(投資信託等)の相談 ・住宅ローンや事業資金融資 ・相続に関する相談(遺言信託など) |
・税務申告の代理 ・法律トラブルの代理交渉 ・登記手続きの代理 |
お金の預け入れ、借入れ、運用。 「お金の管理・運用」の相談先。 |
簡単にまとめると、手続きの「司法書士」、トラブル解決の「弁護士」、税金の「税理士」と覚えると分かりやすいです。それに加えて、公的手続きの「市役所」、お金の管理の「銀行」も身近な相談先です。何が「できないか」も知っておくことで、ご自身の相談したい内容に合わせて、より適切な専門家や機関を選びやすくなります。
相続手続きに関するよくあるご質問(Q&A)
Q. 遺産分割で揉めてしまい、話がまとまりません。
A. 当事者間での話し合いが難しい場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停委員が間に入り、相続人全員が納得できる解決策を探ります。調停でも合意に至らない場合は、「審判」手続きに移行し、裁判官が分割方法を決定します。
Q. 相続税は必ず払わなければいけませんか?
A. いいえ、全ての場合で必要になるわけではありません。遺産の総額が「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算される基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。ただし、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった制度を利用して納税額がゼロになる場合は、申告が必要です。
Q. 手続きは自分たちでできますか?専門家に頼むメリットは?
A. 時間と労力をかければ、ご自身で手続きを進めることも可能です。しかし、戸籍の収集や財産調査は非常に煩雑で、書類の不備で何度も役所や法務局に足を運ぶことになるケースも少なくありません。専門家(司法書士)に依頼することで、正確かつ迅速に手続きを進められるだけでなく、相続人間の精神的な負担を軽減し、円満な相続の実現につながるという大きなメリットがあります。
相続は、誰にでも起こりうることです。しかし、その手続きは多岐にわたり、期限も厳格に定められています。いざという時に慌てないためにも、このページで紹介した全体の流れを把握し、一つ一つの手続きを確実に進めていくことが大切です。
故人を偲びつつも、残された家族が円満に相続を終えられるよう、計画的に準備を進めていきましょう。手続きでお困りの際は、決して一人で抱え込まず、私たち専門家にご相談ください。
遺産相続でトラブルになりやすい3つのポイント
誰に(相続人と相続分)
・誰が相続人になるのか?
・自分はどれだけ相続できるのか?
・相続人間の不公平を調整するには?
>> 詳しくは法定相続と相続人のページをご覧下さい。
何を(遺産)
・何が遺産になるのか?
・遺産の評価の仕方は?
・借金がある場合はどうなるのか?
>> 詳しくは遺産の分類と相続方法のページをご覧下さい。
どう分けるか?(遺産相続の方法)
・どんな分け方があるのか?
・自分にはどの分け方がよいのか?
>> 詳しくは遺産分割協議の種類のページをご覧下さい。
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この記事を担当した執筆者

- 司法書士法人・行政書士やまぐち中央事務所 司法書士 福田修平
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保有資格司法書士 専門分野相続・生前対策
出身地 山口市 メッセージ 弊所が大事にしている「あなたの安心をカタチにします」というフレーズは、どんなに親が家族を想っても、遺言や家族信託などの具体的な対策を実行しなかったために、想いが叶わず、家族が苦しんだり、悔しい想いをする現実をみてきたからこそできたものです。 ご依頼いただいた際には一切の先入観を排除し、皆様の想いの奥にある背景までに想いを馳せ、ベストの形を提案します。
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