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子どものいない高齢夫婦のために家族信託と遺言を併用した事例

状況

①夫Aと妻Bは高齢で子どもがいない夫婦。
いわゆる地主の家系で貸地や貸家、収益アパートを多数持っている。

②不動産の管理は妻Bが行ってきたが足腰も弱り高齢化により複雑な事務処理が難しくなってきた

③所有している貸家も老朽化が進み、維持管理が大変になので、将来的には不動産を売却し老人施設に入りたいと思っていた。

④そんな中地元の金融機関より家族信託の提案を受けた。

司法書士の提案&お手伝い

①現在は妻Bさんが不動産の管理をしているものの夫Aさんが認知症等が原因で判断能力が衰えると大規模な修繕や売却ができなくなる旨説明した

②通常の管理業務であれば支障はないが大きな預金な引出しや不動産の売却はAさん本人の意思確認が必要となるため、Aさんの認知能力低下は大きなリスクである旨説明した。

③Aさんが仮に認知症になり判断能力が無くなっても「成年後見制度」を利用すれば財産管理は問題ないが、妻Bさんがご高齢であること、Aさんの資産が多いことから弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人になる可能性が高く、報酬が発生する旨説明した。

④以前からBさんの弟であるCさんがBさんのサポートをしておりAさん夫妻の信頼も厚いのでCさんに家族信託というかたちで財産管理を任せてはどうかと提案した

⑤またAさんには兄弟がおらず推定相続人が妻BさんだけなのでBさんが先に死亡すると「相続人不存在」となり財産が「国庫に帰属する」ことになるので公正証書遺言を作成することを提案した。
また妻Bさんも同様に公正証書遺言を作成することを提案した。

結果

①Aさん夫妻はBさんの弟Cさんを非常に頼りにしており、今後Cさんのお世話になるので、Aさんの管理している不動産の一部と金銭の一部をCさんに託す家族信託を実行した。

仮にAさんが先に亡くなったとしてもBさんのために信託財産をかつようできるようAさん亡き後は「Bさんのための信託」にスムースに移行できる「受益者連続型信託」とした。

③Aさんは多数の不動産を所有しているが現実的な修繕が必要な物件と将来売却の可能性がある不動産を絞って信託した。

④本件信託はAさんとBさん両名が死亡したら終了し、終了時点で残っている財産は受託者であるCさんが引継ぐかたちにした。

⑤Aさんの信託していない財産はAさん死亡後は通常の相続手続きが必要となるので公正証書遺言を作成「Aさん死亡時にBさんが健在であればBさんに相続させ、Bさんが先に死亡していれば、Cさんに遺贈する」という内容とした。またBさんについても公正証書遺言を作成した。

AさんとBさんの公正証書遺言の遺言執行者として弊所を指定していただき、実際の遺言による手続きがスムースに行えるようにした。

司法書士のポイント

①子どものいない夫婦は相続関係が複雑になります。相続人が配偶者と「被相続人の親や兄弟」になるからです。残された配偶者がなくなった夫や妻の親や兄弟と相続について協議するのは心情的にも大きなストレスになることが多いと思われます。「全ての財産を夫(または妻)に相続させる」という趣旨の遺言を残しておけばスムースに配偶者に財産を相続させることができます。また被相続人の兄弟には「遺留分」がないためトラブルになる可能性は低くなります。子どもがいない夫婦はお互いが遺言書で財産を承継させる 「タスキがけ遺言」をすることが重要です。

②本件のようにご高齢の夫婦が資産を持っている場合その財産管理が問題となります。特に不動産は維持管理、売却をいつどのタイミングで行うかが重要であり、そのタイミングで不動産の所有者が認知症等で判断能力がないと何もできないからです。
成年後見制度を使う事である程度対応できますが、経済的な負担が大きいのは前述の通りです。
Aさん夫婦のように身近に信頼できる親族がいる場合は「家族信託」を活用し、財産管理を委ねるのは非常に有効な手段です。
ただし、家族信託は成年後見制度のような裁判所による監督機能がないので、権利を濫用されるリスクがあります。
信頼できる家族や親族がいないのであれば、初めから成年後見制度を視野にいれた方が良い場合もあるので注意が必要です。

Aさん夫妻のように不動産などの資産が多い場合は、家族信託と遺言を併用し「認知症対策」「相続対策」を多角的に実行することが重要です。
弊所ではあらゆる角度から現状を把握し、特定のスキームに当てはめることなく柔軟なご提案をさせていただきます。

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この記事を担当した執筆者
司法書士法人・行政書士やまぐち中央事務所 司法書士 福田修平
保有資格司法書士 専門分野相続・生前対策
出身地 山口市
メッセージ 弊所が大事にしている「あなたの安心をカタチにします」というフレーズは、どんなに親が家族を想っても、遺言や家族信託などの具体的な対策を実行しなかったために、想いが叶わず、家族が苦しんだり、悔しい想いをする現実をみてきたからこそできたものです。 ご依頼いただいた際には一切の先入観を排除し、皆様の想いの奥にある背景までに想いを馳せ、ベストの形を提案します。

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