解決事例:想いを伝える遺言書 ― 支えてくれた人に感謝を込めて財産を託す
相談者のプロフィール
今回ご相談いただいたのは、Bさん(仮名)。
Bさんは80代の高齢者で、現在は一人暮らしをされています。配偶者とは死別しており、お子さまもいらっしゃいません。
遠縁の親族は数名いますが、長らく交流がなく、現在も連絡を取り合うような関係ではありません。
一方で、Bさんの日常生活は、親族とは別の立場で長年親身になって寄り添ってくれているAさん(仮名)に大きく支えられていました。Aさんはご近所に住んでおり、Bさんが体調を崩したときには病院への付き添いや買い物、家事全般を担ってくれるなど、まるで実の家族のような存在です。
ご相談の背景
Bさんは、近年体調を崩すことが増えたことから、「もしものとき」に備え、自分の財産をどのように託すか、真剣に考えるようになりました。
特に不安を感じていたのは、次のような点でした。
- 信頼するAさんに、全財産を託したいという強い想いがある
Bさんにとって、Aさんは単なる世話人ではなく、心から信頼できる「家族以上の存在」でした。日々の暮らしを共にし、病院の付き添いや食事の支度、介護的なサポートまで行ってくれているAさんに、感謝の気持ちを形にしたいと考えられていました。 - 法定相続人との疎遠な関係に対する不安
一方で、法定相続人となりうる親族とは、ほとんど交流がなく、連絡先さえ不明な方も含まれていました。数十年連絡を取っていない親族に財産が渡ることに違和感を覚えつつも、どう手を打てばよいか分からず、不安を抱えていらっしゃいました。 - 家族の歴史や心の内を、きちんと後に遺したい
Bさんは、生前に身内間で複雑な事情があったこともあり、心のなかでずっと抱えていた想いがありました。単に「財産を分ける」という事務的な遺言ではなく、自分の人生を振り返り、誰にどう思いを託すのかを丁寧に表現したい、という強い願いがありました。
司法書士のご提案と対応
このようなBさんの背景やご希望を受けて、司法書士としては、次のような提案をさせていただきました。
1. 公正証書遺言の作成を提案
Bさんの意思を確実に実現するには、「法的に有効な遺言書」の作成が不可欠です。
自筆証書遺言では形式不備による無効リスクや、保管の不安、発見されない可能性があるため、公証役場で作成する公正証書遺言を提案しました。これは公証人が作成し、正本が保管されるため、安全性・信頼性に優れています。
2. 付言事項による想いの伝達
法的に有効な遺言条項だけでなく、「なぜこの人に遺したいのか」「どういう想いがあるのか」といった気持ちの部分を記載できる「付言事項」の活用をご提案しました。
これは法的効力はないものの、遺言を受け取った人や周囲の関係者にとって、大きな意味を持ちます。
3. 予備的な相続・遺贈指定、葬儀費用の負担明示
指定した受遺者が遺言者よりも先に亡くなった場合の「予備的遺贈」、葬儀や納骨に関する費用の負担方法なども明記することで、Bさんの不安を丁寧に取り除きました。
また、疎遠であるものの一部の親族にも一定の配慮を示す条項を加えることで、万が一の争いも予防できるよう工夫しました。
実際の手続きと成果
複数回の面談と検討を重ねた結果、Bさんは正式に公正証書遺言を作成されました。
遺言の内容は、次のような構成です。
- 財産のすべてを、信頼するAさんに遺贈する旨の明記
- もしAさんが先に亡くなっていた場合、Bさんの意思に従い、他の候補者に遺贈する旨の「予備的遺贈」条項
- 葬儀・納骨に関する希望(形式や執行方法)
- 付言事項にて、家族への想いや過去の出来事への言及、支えてくれた方々への感謝を丁寧に記載
付言事項には、以下のようなBさんの想いが綴られていました。
「亡き兄に生前なにも恩返しできなかったことを今でも悔やんでいます。…
Aさん、あなたがそばにいてくれたおかげで、私は安心してこの晩年を過ごせました。…
これまでの人生は平坦ではありませんでしたが、最後に信じられる人と出会えたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。」
このような「想いを遺す」ことに重きを置いた遺言は、受け取る側にとっても大きな支えとなり、法的な手続きを超えた心のつながりを築く手段となります。
司法書士の視点からのポイント
- 付言事項の活用は、争いを未然に防ぐ心理的効果がある
付言は法的効力がないといえども、財産を受け取れなかった人に対して「なぜそうなったか」の背景を伝えることで、納得や理解につながることが多く、無用なトラブルを防ぐ一助となります。 - 「予備的遺贈」や費用配慮の記載は実務的な混乱を防ぐ
遺言の執行時に想定外の事態が発生することは珍しくありません。こうした状況を予測し、あらかじめ対応策を条項に組み込んでおくことが、実務上のトラブルを回避する鍵となります。 - 「人に託す」遺言が増えている
核家族化・高齢単身世帯の増加に伴い、法律上の相続人ではなく、生前に支えてくれた方に財産を託すケースが増えています。そうした状況においては、法的にしっかりと遺言書を整えることが不可欠です。
まとめ:人生を締めくくる大切なメッセージ
この事例は、遺言書が単なる財産の分配を超え、人生の集大成として「想いを伝える」ための大切な手段であることを改めて示してくれました。
法的な手続きはもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、どのような気持ちで財産を託すか、そして誰に何を遺したいのかという「心の部分」です。
私たち司法書士は、そうした想いに寄り添いながら、法と心の両面でご相談者様を支えることを目指しています。
「もしものときのために」「大切な人に想いを届けるために」――遺言作成をご検討中の方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
この記事を担当した執筆者

- 司法書士法人・行政書士やまぐち中央事務所 司法書士 福田修平
-
保有資格司法書士 専門分野相続・生前対策
出身地 山口市 メッセージ 弊所が大事にしている「あなたの安心をカタチにします」というフレーズは、どんなに親が家族を想っても、遺言や家族信託などの具体的な対策を実行しなかったために、想いが叶わず、家族が苦しんだり、悔しい想いをする現実をみてきたからこそできたものです。 ご依頼いただいた際には一切の先入観を排除し、皆様の想いの奥にある背景までに想いを馳せ、ベストの形を提案します。
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