甥っ子に迷惑をかけないよう家族信託と遺言を活用した相続対策
依頼者
Aさん(75歳男性)、甥Bさん
相談内容
Aさんは75歳の男性で、数年前に妻を亡くし、子どもがいないため独り身となりました。現在は施設に入所しており、心臓に持病があるため日常生活において無理がきかない状況です。判断能力に問題はないものの、高齢であることから、今後の生活設計や財産管理について不安を感じていました。
Aさんの親族構成としては、兄弟姉妹がおり、相続が発生すると法定相続人は兄弟姉妹およびその子ども(甥や姪)となります。しかし、Aさんは長年兄弟や甥姪と疎遠になっており、現在の生活において実質的に支援をしてくれているのは、甥のBさんのみでした。
BさんはAさんの生活を支援し、施設への入所手続き時にも保証人となってくれました。しかし、Aさんが判断能力を失った場合、Bさんが財産を管理する法的権限がないため、施設の費用支払いなどが滞る可能性がありました。また、相続時にBさんへ財産を遺したいと考えていましたが、法定相続人ではないため、遺言書がなければBさんが財産を受け取ることはできません。
このまま何の対策もせずにAさんの判断能力が低下すると、
- 施設費用の支払いが困難になり、最悪の場合、退去を求められる可能性がある。
- Aさんの相続財産が10人以上いる甥姪に分散され、Bさんが何の財産も受け取れない。
- 遺産分割協議の際、疎遠な親族とBさんの間でトラブルが発生する可能性がある。
こうしたリスクを回避し、Bさんに迷惑をかけずに円滑な財産管理と相続を実現するため、司法書士に相談しました。
司法書士の提案
Aさんの希望を実現するため、司法書士は以下の2つの方法を提案しました。
- 家族信託の活用
家族信託とは、財産管理を家族など信頼できる人に託し、将来の管理や活用をスムーズに行えるようにする仕組みです。Aさんが判断能力を失った後も、財産を適切に管理し、施設費用などの支払いが滞らないようにするため、家族信託契約を締結しました。- 委託者(財産を託す人):Aさん
- 受託者(財産を管理する人):Bさん
- 受益者(財産の利益を受ける人):Aさん(生存中)→Bさん(Aさん死亡後)
- 信託財産:Aさんの預貯金の一部
- 目的:施設費用や生活費の支払いを確保すること
- 公正証書遺言の作成
AさんはBさんに感謝の気持ちを込めて、できる限り多くの財産を遺したいと考えていました。しかし、Bさんは法定相続人ではないため、遺言書がなければ遺産を受け取ることはできません。そのため、公正証書遺言を作成し、財産の遺贈を確実なものにしました。- BさんにAさんの財産の大部分を遺贈する
- 他の相続人(兄弟姉妹の子どもたち)にも少額ずつ分配する
- 付言事項として、Bさんへの感謝と、他の相続人に理解を求めるメッセージを記載する
解決結果
司法書士のサポートを受け、Aさんは家族信託と遺言を活用して、以下のような安心できる状況を整えることができました。
- 施設費用の支払いが滞る心配がなくなった
家族信託により、Aさんが判断能力を失った場合でも、Bさんが財産を管理し、必要な支払いを確実に行える仕組みを作りました。 - Bさんが適切に財産を受け取れるようになった
遺言により、Aさんの財産の大部分をBさんに遺贈できることが確定しました。また、他の相続人にも一定の配慮をすることで、遺産分割に関するトラブルを防ぐことができました。 - 相続手続きの負担が軽減された
遺言によって財産の分配方法が明確になり、相続発生後の手続きがスムーズに進むことが期待できます。
Aさんは「自分が元気なうちに準備できたことで、Bさんに迷惑をかけることなく安心して生活できる」と満足されました。また、Bさんも「これで突然のことがあっても対応できるので安心した」と安堵されていました。
司法書士のポイント
- 家族信託の活用
- 将来的な判断能力の低下に備え、財産管理を信頼できる人に託すことで、施設費用などの支払いを確実にすることができる。
- 公正証書遺言の作成
- 相続人が多い場合、遺言書を作成することで、希望する人に確実に財産を渡せる。
- 付言事項を活用して、相続人間のトラブルを防ぐ工夫ができる。
- 相続対策は早めの準備が重要
- 判断能力があるうちに適切な手続きを行うことで、自分の希望を実現し、大切な人への負担を軽減できる。
Aさんの事例のように、「家族信託」と「遺言」を組み合わせることで、円滑な財産管理と相続対策を実現できます。将来的な不安を感じている方は、ぜひ早めの対策を検討してみてください。
この記事を担当した執筆者
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- 司法書士法人・行政書士やまぐち中央事務所 司法書士 福田修平
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保有資格司法書士 専門分野相続・生前対策
出身地 山口市 メッセージ 弊所が大事にしている「あなたの安心をカタチにします」というフレーズは、どんなに親が家族を想っても、遺言や家族信託などの具体的な対策を実行しなかったために、想いが叶わず、家族が苦しんだり、悔しい想いをする現実をみてきたからこそできたものです。 ご依頼いただいた際には一切の先入観を排除し、皆様の想いの奥にある背景までに想いを馳せ、ベストの形を提案します。
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